チャリダー★ライターの「カクシゴト」

東京在住のライターは何を考えているのか?

「まだ図書館で調べてるの?だせー」と言う前に、こっそり読むべき一冊

人生をやり直したいと思うほど、衝撃を受けた本がある。『図書館に訊け!』 だ。これは図書館の上手な使い方を私に教えてくれた。

「はぁ? いまどき図書館?」と思うなかれ。著者は冒頭、こんな言葉で読者を挑発する。

図書館の怖いところは、利用者の関心やレベルに応じて、その相貌と機能を変えるところにある。このため、自分は十分利用できていると自認していても、知らず知らずのうちに稚拙な利用法で終わっていたりする。

本で調べる

ひえー。小さな声で言うけどさぁ、私は、いかに自分が図書館を使いこなしていなかったかを思い知らされたよ。人生損した気分だ。

よい本の見分け方から情報探索の方法まで

著者の井上真琴は同志社大学の元図書館員。だから大学図書館を中心に話は進むが、内容は一般的な図書館にも十分通用するものになっている。

たとえば、大学図書館は限られた予算で本を購入するために、書籍の選択基準を設けている。その選択基準は私たちが普通の図書館を利用するときに、よい本を見分けるのに役立つ。

図書館に訊け! (ちくま新書)

本書のメインともいえる「どうやって資料にたどりつくのか」という章では、それこそ町の図書館でも使えるノウハウで、文献や情報の探索方法の基本から、実際の探索プロセスまで詳しく解説している。

百科事典の暗号を読み解けますか?

百科事典は「索引巻」を引いてから、次にあいうえお順の「見出し巻」の本文にアプローチするのが鉄則であるということをご存じだろうか?

たとえば「宗教改革」を『世界大百科事典』の索引巻で引くと、こんなふうに書いてある。

宗教改革(キリスト教) 13-40右、2-178右(イギリス)、6-207中(カルバン)……


まるで暗号だが、これは「宗教改革」が見出し項目として存在し、「13-40右」は、13巻の40頁右側に解説があるということを示している。

続く「2-178右(イギリス)」というのは、2巻の178頁右側にある「イギリス」という項目の中で、宗教改革に関する記述があるということを意味する。全文検索といえばイメージが伝わるだろうか。

つまり、百科事典は索引から引くことで、関連項目までわかるようになっている。著者はこうしたことも、例を挙げながら丁寧に教えてくれる。

本は信頼しつつ疑え

ネットは情報の当たりをつけるには便利だ。でも信頼性についてはご承知の通り。校閲(情報の裏どり)をしていないものが非常に多く、危うい。

本は百科事典や参考図書など、制作過程で校閲がされているもので基本情報を押さえれば、情報の質は担保される。その先の詳細情報や関連情報を調べるときも、本であれば、著者以外の複数の人の目を経て商品化されているので、一定の評価がなされていると考えていいだろう。

ただし、本といえども一冊を丸々鵜呑みするのは危険だ。情報は多角的に調べなければ、その本質はわからない

図書館を使って、頭を使え

そこで図書館でぜひ利用したいのが、モノではなくヒトだ。

図書館員に訊け!

図書館員に調べたい事について相談すれば、「この資料を見ればわかるのではないか」とか、「こうすれば資料が見つかるかもしれない」といった資料へのアプローチ方法を提案してくれる。自分一人では見つけることができなかった、情報までの道のりを教えてくれるのだ。

注意したいのは、図書館員は質問に対して「正解」を教えてくれるわけではないということ。複数の資料や情報へのアプローチ方法を教えてくれるだけだ。だから情報の価値判断は利用者がしなければならない。このあたりはネットと似ているが、その信頼性についてはすでに述べた通り。

図書館を使って、頭を使え

最新情報を知るにはgoogleが便利だ。しかし、他者の知を経てチェックされた情報を集め、物事を多面的に理解し、関連情報を得て、その情報の位置づけを知り、真の意味を理解し、正誤を自分の頭で判断するためには、図書館が欠かせない。

図書館は利用者のレベルに応じて姿を変える。図書館は己の知性の鏡なのだ。「いまどき図書館?だせー」と言う人は、「だせー」のである。

図書館に訊け! (ちくま新書)

図書館に訊け! (ちくま新書)

  • 作者: 井上真琴
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2004/08/06
  • メディア: 新書
  • 購入: 4人 クリック: 295回
 

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